お世話になっております。ざきおです。
前回からミニチュア制作の仕上げに使うニスの成分について調査をしています。
曲がりなりにも化学専攻をしてきた理系おじさんなのでニスの成分について少し詳しく調査していこうと思いますのでよろしくお願いします。
今回はミニチュア制作でよく使用される水性ニスについて調査します。成分等が気になる方は是非ご覧ください。(逆に小難しいことを書いているので苦手な方はすみません。)
前回は油性ニスのマニキュアについて調査しているので気になる方はこちらからどうぞ
ニスの大分類(前回のおさらい)
ニスの中で大きく分類されるのが「油性ニス」「水性ニス」です。
含まれている希釈剤の種類によって分類されます。油性ペンや水性ペンをイメージすると分かりやすいかもしれません。
| 項目 | 油性ニス | 水性ニス |
| 希釈剤 | 有機溶剤 | 水 |
| 臭気 | 刺激臭 | ほとんどない |
| 仕上がり | 非常に良い | 良い |
| 危険性 | 高い | 低い |
| 取り扱い | 面倒 | 簡単 |
個人の趣味等でミニチュア制作をする場合には取り扱いやすいという点で水性ニスが良いと思います。
水性ニスとは
水性ニスの定義としては希釈剤に「水」を大部分に含んでいるニスとなります。
しかしながら、ニスの重要な成分である「樹脂」は一般的に水に溶解しません。乾燥した後に水に溶けてしまってはダメですよね。
そこで、水性ニスに含まれる樹脂は水に溶解(正確には分散)させるためにエマルションという状態になっています。このエマルションは身近な製品にもたくさん存在し、「牛乳」「マヨネーズ」「乳液(化粧品)」などが挙げられます。
中身のイメージ(エマルション)
下に簡易的なイメージ画像を示します。乳化剤という成分が「樹脂」と「水」の間に入り、本来相性が悪いところを上手く調和しているというイメージです。球状の樹脂の周りに乳化剤がまとわりつき、樹脂同士がくっつきすぎず水中に良いバランスで漂っています。

この状態は乳化という状態であり、外観としては乳白色に見えます。牛乳なども白い外観をしていますよね!
塗膜化プロセス
続いて、水性ニスの塗膜化プロセスです。これも下にイメージ図を載せます。
「①水の揮発」⇒「②樹脂同士の接近」⇒「③樹脂の融着」⇒「④塗膜化」となります。

Step1:水が揮発し、樹脂同士の物理的距離が近くなります。基本的には室温でゆっくりと乾燥させていくので、樹脂は規則正しく並んでいきます。

Step2:樹脂同士が接触すると、同じもの同士が馴染むように接触面の融着が始まります。乾燥前の樹脂粘土を接触させると接着剤を使わなくても接着されるのと同じ原理です!

Step3:水の乾燥により樹脂の融着が進み、隙間のない均一な塗膜ができます。
水性ニス(エマルション)は他の種類であっても基本的に上記プロセスで塗膜化していきます。以上を踏まえると、乾燥する環境(温度や湿度)によって「水の揮発」や「樹脂の融着状態」が変わるため、仕上がり方が変わる可能性があります。
もし、夏場と冬場で仕上がり方が違うと感じているのであれば、乾燥条件はなるべくコントロールしてあげたほうが良いですね。
基本成分
水性ニスの基本成分は「水」「樹脂」「助剤」となります。(艶消しニスの場合は艶消し剤も入る)
水:希釈剤として使われる。ニス中に半分くらい入っているかと思われます。
樹脂:水性ニスで使用される多くの樹脂は「アクリル樹脂」と「ウレタン樹脂」があります。水に分散させるために乳化剤が使用されることが多い。
助剤:細かな部分を助けてくれる様々な添加剤たち。例を挙げると「エマルションの安定性UP」「気泡の破泡しやすさUP」「塗膜の平滑性UP」などです。
水と助剤は水性ニスに共通している部分であり、差別化される部分は「樹脂」となります。商品に水性アクリルニスと書いてある場合はアクリル樹脂、水性ウレタンニスはウレタン樹脂(+アクリル樹脂)が使用されていると推測されます。
アクリル樹脂の特徴:高い透明性があり、耐候性が良い
ウレタン樹脂の特徴:弾力性に富み、塗膜が強靭
下に水性アクリルニスと水性ウレタンニスの塗膜概念図を示します。

水性アクリルニス:樹脂の絡み合いによって塗膜化
水性ウレタンニス:樹脂の絡み合いと架橋(樹脂同士を繋ぐこと)により塗膜化
⇒ ウレタンは架橋による結合をしているため塗膜が強靭で耐水性が高い。
以上より、簡単に2つの塗膜の特徴をまとめると、、、
水性アクリルニス:耐候性が良く(紫外線による変色が少ない)、速乾性があり取り扱いやすい。
水性ウレタンニス:強靭で耐水性や耐薬品性に優れている。
よって、アクリルはホビーや鑑賞用などの耐久性があまりなくてもよい物に、ウレタンは日常使いする物に使用されることが多いです。
では次から実際の商品を見てみましょう。
水性アクリルニス(パジコ)
私はパジコの水性アクリルニスを購入して使っていますので、この製品について詳しく調べてみます。


厚塗りツヤ出しと書かれており、容量は100mLです。(カタログ:2025年11月時点で税込み880円)
商品の説明はHPから引用します。
超光沢仕上げ。
https://www.padico.co.jp/products/coating/coating014.html
粘土をはじめ紙・布・木・金属など多くの素材にそのままご使用いただける、水性ニスです。
絵の具に混ぜて使用することもでき、乾くと耐水効果がでます。
高い光沢が特徴で絵の具と混ぜて使用もできるそうです。(絵の具と混ぜるのはやったことないです)
●色
やはりエマルション色である乳白色となっております。乾くと透明です。

●臭い
臭いは蓋を開けた程度では気にならないですが、鼻を近づけて嗅いでみると化学的な有機溶剤っぽい臭いはします。助剤に少量は含まれているのでその臭いかなと思います。(集中して作業していたら気づかないと思います)
●パジコ製の水性アクリルニスの特徴まとめ
- 適応素材の範囲が広い
- 1回塗りで光沢仕上げ
- 刺激臭なし
- 生活耐水塗膜になる
- 水性絵の具を混ぜてカラーニスにできる
- 完全乾燥に4~7日かかる
所感としては適応素材の範囲が広いのが最大の特徴で、色々な場面で気軽に使えるのが初心者向きでよいと思いました。
水性ウレタンニス(和信ペイント)
私はまだ水性ウレタンニスを持っていないので和信ペイントさんの「水性ウレタンニス 130ml 透明クリヤー」の商品情報から調べていきます。
屋内木部用という記載があり、ウレタン樹脂が使用されている旨も書いてあります。(公式オンラインショップ:130mLの製品は2025年11月時点で税込み1320円)
色はエマルション由来の乳白色で、乾くと透明になるとの記載があります。おそらくですが、メイン樹脂はアクリル樹脂で、ウレタンによる架橋が入っているものではないかと予想しています。
続いて、HPから商品情報を見ていきます。
丁寧にも成分表が確認できたので以下に引用します。
https://www.washin-paint.co.jp/content/download/7040/64541/file/Ingredients_Suisei-Urethane-Nisu_Clear.pdf
合成樹脂類はウレタン樹脂となりますが、凍結安定性剤等助剤が含まれていることが分かります。
水性ニスはどの製品にも注意事項に「低温(5℃以下)での保管や使用はNG」との記載があります。これは低温で水が凍ってしまうとエマルションの安定性が失われて品質を著しく低下させてしまうからです。よって、少しでも凍結による影響を抑えるために凍結安定性剤が添加されていると考えられます。
パジコの水性アクリルニスには助剤の具体的な記載はありませんでしたが、含まれていると考えて間違いないでしょう。
申し訳ござませんが、購入していないので実際の臭い等は分かりません。
●和信ペイント製の水性ウレタンニスの特徴まとめ
- 適応素材は屋内の木部
- 基本は2回塗り
- 臭いが少ない
- 硬い塗膜になり実用的なものに使用可能
- 乾燥時間90分/20℃
所感としては適応素材が木部に絞られており、家具向けであると感じました。しかし、塗膜の耐久性は水性アクリルニスと比較して高く、樹脂粘土等であれば十分密着すると考えられるため、耐水性や日常使いをするものに適していると思いました。
まとめ
今回はミニチュア制作で使用される水性ニスを取り上げて、成分や特徴の調査を行いました。
(※推測や予想は私見を多く含みますので間違い等ありましたら申し訳ございません。)
その中でも水性アクリルニスと水性ウレタンニスをピックアップしております。各特徴や塗膜化プロセスを学ぶことで最適なニスの選択を手助けできたらなと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




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